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相続した家を売ったときに使える
「3,000万円の特別控除」

相続した家を売ったときに使える<br/>「3,000万円の特別控除」

親から家を相続したあと、「空き家のままでどうしよう」「売りたいけれど税金が心配」という相談は非常に多くあります。
そんなときに知っておきたいのが、相続した不動産を売却したときの「特別控除(最高3,000万円)」です。

この制度を活用すれば、売却益が出ても所得税を大きく減らせる可能性があります。
ただし、耐震改修や取壊し、売却時期などに細かい条件があるため、注意が必要です。

今回はこの制度を、一般的な流れとともにわかりやすく解説します。

 

1.相続不動産を売るときにかかる税金の基本

相続した不動産を売却すると、「譲渡所得税(+住民税)」がかかる場合があります。
譲渡所得の計算は次のようになります。

売却価格 -(取得費+売却にかかった費用)= 譲渡所得

たとえば、相続した家を3,000万円で売却し、取得費・仲介手数料などに1,200万円かかったとすると、
譲渡所得は1,800万円です。

この1,800万円に対して、長期譲渡(所有5年以上)で約20%、短期譲渡で約39%の税率がかかるため、
何も控除がなければ数百万円の税負担になることもあります。

 

2.相続した家でも「3,000万円の特別控除」が使えることがある

本来「3,000万円の特別控除」は、自分が住んでいたマイホームを売ったときに使える制度です。
しかし、相続した家が一定の条件を満たす場合、亡くなった親の家でも同様の控除を受けることができます。

つまり、被相続人(亡くなった親など)が生前住んでいた家を、相続人が売却する場合
要件を満たせば譲渡所得から最大3,000万円(※相続人が3人以上なら2,000万円)を差し引けるのです。

 

3.特別控除を受けるための主な条件

一般的に、次のような条件をすべて満たす必要があります。

(1)家屋の条件

  • 被相続人が亡くなる直前まで住んでいた住宅であること(被相続人が要介護認定または要支援認定を受けて老人ホーム等に入所していた場合でも、一定の条件を満たせば「居住していたもの」とみなされます)

  • 相続時点で「誰も住んでいない(空き家)」状態であること(被相続人が一人暮らしであったこと)

  • 区分所有のマンションなどではなく、一戸建ての家屋であること

  • 昭和56年5月31日以前に建築された建物であること

(2)耐震改修または取壊しを行うこと

相続した家屋については 耐震改修を行うか、取り壊して土地として売る必要があります。令和6年1月1日以降は譲渡後に買主が実施しても良いことになりましたが、その場合は実施を確実にしてもらえるよう契約書などに明記しておいたほうが良いでしょう。

これは、旧耐震基準の建物をそのまま流通させないための安全面の措置です。

したがって、

・中古戸建として売却する場合は耐震改修をする

・家を取り壊して更地とする

このいずれかの対応が必要になります。

耐震工事費や取壊し費用も譲渡費用に含められるため、税務上は節税にもつながります。

(3)相続から「おおむね3年以内」に売却していること

この「おおむね3年以内」という表現が少し分かりづらいのですが、
正確には次のように定められています。

被相続人が亡くなった日の属する年の翌年の1月1日から数えて、
3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること。

たとえば、

・被相続人が2022年5月に亡くなった場合

・相続人がその家を売却できる期限は「2025年12月31日」まで
ということになります。

つまり、「3年+α(翌年末まで)」の期間が実際の目安です。

相続してから長期間放置していると、この期間を過ぎて特例が使えなくなるため、
「相続したら3年以内に売る」ことを意識するのが大切です。

(4)相続から売却までの間に貸したり事業に使っていないこと

相続後に賃貸したり、自分や他人が住んでしまうと対象外になります。
「空き家のまま売却」することが前提です。

(5)売却価格が1億円以下であること

高額な物件は制度の対象外です。
相続人が複数いる場合、全員の売却分を合算して1億円以下であるかを確認する必要があります。

 

4.相続人が3人以上の場合の控除額

この制度では、相続人の数が3人以上の場合、控除額が変わります。

・相続人が1人または2人 → 控除額 3,000万円

・相続人が3人以上 → 控除額 2,000万円

たとえば3人兄弟で実家を共有相続し、売却して利益が出た場合、
それぞれの控除枠が3,000万円ではなく2,000万円になります。

この違いを知らずに申告すると、後から修正が必要になることもあるため注意が必要です。

 

5.具体例で見る控除の効果

例)相続した実家を売却したケース

・売却価格:3,000万円

・取得費+仲介手数料など:1,200万円

・売却益:1,800万円

このとき特別控除を使わなければ、
1,800万円 × 約20% = 約360万円の税金 が発生します。

しかし控除を適用すると、

・相続人が2人までの場合:1,800万円-3,000万円=課税ゼロ

・相続人が3人以上の場合:1,800万円-2,000万円=課税所得200万円

後者の場合でも、税額はおよそ40万円前後に抑えられます。
控除の有無で負担が大きく変わることが分かります。

 

6.注意したいポイントまとめ

・耐震改修または取壊しが必須

・相続から3年を経過する年の12月31日までに売却すること

・相続人が3人以上のときは控除額が2,000万円

・売却代金は1億円以下

・空き家のまま売る(貸付・居住・事業利用なし)

・確定申告が必要(必要書類を添付)

 

7.まとめ

相続した家を売るときに使える「被相続人居住用財産の3,000万円特別控除」は、
条件を満たせば非常に大きな節税効果があります。

ただし、

  • 対象家屋の条件がある

  • 耐震改修または取壊しが必要

  • 相続から「おおむね3年以内」に売却する期限がある

といった細かい要件に注意が必要です。

「いずれ売ろう」と考えているうちに期限が過ぎてしまうことも多いため、
相続が発生した時点で早めに不動産会社や税の専門家に相談することが大切です。

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監修者情報

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向笠 昌博

株式会社あおば代表取締役。
不動産のプロとして土地・建物を最大限に活かし、オーナー様や地域に貢献することをモットーに、不動産のスペシャリストとして日々業務に向き合っております。

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