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不動産を共有名義で相続するリスクと注意点
相続が発生した際、不動産は相続人全員で共有名義とするケースが多く見られます。共有名義は一見公平に思えますが、実は後々トラブルの原因になることが少なくありません。
一方で、場合によっては共有名義がメリットになることもあります。
本記事では、不動産を共有名義で相続する際のリスクと注意点に加え、共有が有効に働くケースについても解説します。
1. 共有名義で相続する仕組みと現状
不動産を相続する際は、法定相続分に応じて名義を分けることが一般的です。たとえば、父親が亡くなり母親と2人の子どもが法定相続人である場合、母が2分の1、子どもがそれぞれ4分の1ずつの持分で共有することになります。
【共有名義の特徴】
- 持分は個別に売買・譲渡可能:共有者は自分の持分のみを第三者に売却することができます。
- 全員の同意が必要な場合がある:不動産全体を売却する際や大規模な修繕を行う際には、共有者全員の同意が必要です。
2. 共有名義で相続するリスク
① 売却や管理の意思決定が困難
不動産の共有名義では、売却や賃貸など重要な判断には共有者全員の同意が求められます。
例えば、4人で共有している場合、1人でも反対すれば売却はできません。これにより不動産の流動性が低下し、資産としての活用が制約されます。
② 相続人の増加による権利の細分化
共有名義で相続した不動産は、さらに次世代へと相続される際に持分が細分化されます。
例えば、父→子→孫と相続が進むと、最終的には複数人がごくわずかな持分を所有する状態になり、権利関係が複雑化します。このような状況では、不動産の売却や活用が一層難しくなります。
③ 税務や登記の手続きが煩雑
共有名義の場合、不動産取得税や固定資産税などの納税通知書は代表者のみに送付されますが、支払い義務は共有者全員にあります。
また、共有者が亡くなるたびに相続登記が必要になりますが、相続人全員が協力しないと登記が完了しないケースがあります。放置すると「所有者不明土地問題」に発展する恐れがあります。
④ 共有者間でのトラブル
共有者間で意見が分かれるとトラブルが発生しやすくなります。
- 修繕費用の負担割合で揉める
- 一部の共有者が勝手に持分を売却
- 使用頻度や利益分配の不公平感
このような事態は親族間の関係悪化を招く恐れがあります。
3. 共有名義が有効なケース
一方で、不動産の共有が有効に働くケースも存在します。以下のような状況では、あえて共有名義にすることで相続人全体の利益が守られる場合があります。
① 将来的に売却や賃貸の計画がない場合
親が住んでいた家を兄弟で相続し、そのまま誰かが住み続けるケースでは、共有名義が有効です。
例えば、長男が住むが名義は兄弟3人で共有する場合、売却しない限りは権利関係が固定されるため、大きな問題にはなりにくいでしょう。
② 固定資産税や維持費を分担したい場合
不動産の維持管理には固定資産税や修繕費などのコストがかかります。共有にすることで負担を分散できるため、単独で相続するよりも経済的なメリットが得られる場合があります。
③ 親族間での公平性を保つため
「家は長男が相続するが、次男と三男にも平等に資産を分けたい」という場合、共有名義にすることで公平性を保てます。
持分を法定相続分で分けることで、他の相続人が「不平等だ」と感じにくくなります。
④ 親族間で足並みをそろえるため
広い土地の場合、土地全体で活用方法を考えたほうが良いことがあります。分筆してそれぞれを相続するという方法もありますが、相続した分を売却してしまうと全体での活用ができなくなってしまうので、あえて分割せずに共有名義とすることもあります。
4. 複数人で相続する際の注意点と対策
① 単独名義への変更を検討
共有名義ではなく、1人が単独で相続し、他の相続人には代償金を支払う方法があります。
代償金は現金で支払うか、他の財産で補う形で対応できます。単独名義にすれば意思決定がスムーズになり、不動産の管理や活用がしやすくなります。
② 共有者間での事前合意
どうしても共有名義で相続する場合は、共有者間で取り決めを明確にすることが重要です。
- 売却・賃貸時の合意方法
- 管理費用の負担割合
- 使用ルールや収益分配方法
これらをあらかじめ文書に残すことで、後々のトラブルを防ぎやすくなります。
③ 不動産共有を回避するための生前対策
相続時に不動産が共有名義にならないようにするには、生前贈与や遺言書の作成が有効です。
- 生前贈与:特定の相続人へ不動産を生前に譲渡しておく
- 遺言書:単独名義で相続させる旨を記載する
これにより、共有名義を回避し、スムーズな相続が可能になります。
5. まとめ
不動産を共有名義で相続する場合は、意思決定の困難さやトラブルリスクを伴います。ただし、売却予定がない場合や維持費を分担したい場合などでは、共有が有効に働くケースもあります。
将来のトラブルを防ぐためには、単独名義への変更や共有者間の合意形成、事前対策が重要です。