オフィシャルブログ
生前贈与の重要性と具体的な方法
遺産相続を「する方」(被相続人)が行うべき生前対策として「財産把握」「生前贈与」「遺言書作成」「家族信託」の4つを挙げさせていただいておりますが、豆知識コラム帖でより詳しい内容をお伝えしたいと思います。こちらのコラムでは「生前贈与」について。
相続税対策としての生前贈与とは
相続には相続税が、生前贈与には贈与税がかかります。そして贈与税の税率は概ね相続税より高くなっています。にもかかわらず生前贈与が相続税対策として有効と言われているのは、相続税対策を行うために利用できる、多岐にわたる制度が用意されているから。これらの制度を上手に活用することで、相続税の負担を軽減し、資産を次世代に円滑に移すことができます。以下では、各制度について詳細に解説します。
1. 相続時精算課税制度
-
制度概要: 相続時精算課税制度は、贈与税の非課税枠を超えて贈与を受けた場合に適用される制度です。最大2,500万円まで非課税で贈与を受けることができますが、相続時にその贈与額を相続財産として加算して相続税が課税されます。
-
手続き:
- 贈与者と受贈者が相続時精算課税制度を選択する場合、税務署に届け出が必要です。
- 精算課税の適用を受けるには、贈与者から受贈者に贈与を行った年の翌年に贈与税の申告をする必要があります。
-
メリット:
- 最大2,500万円まで贈与税が非課税となり、資産を早期に次世代に移転できます。
- 相続時に精算するため、贈与時に高額な税負担を避けられる場合があります。
-
デメリット:
- 一度選択すると、後で元の課税方式(暦年課税)に戻せません。
- 精算時に相続税が発生する可能性があるため、相続時に想定外の税負担が生じることがあります。
2. 暦年課税の基礎控除
-
制度概要: 毎年の贈与に対して、110万円までは非課税となる制度です。贈与額が110万円を超えた場合、超過分に対して贈与税が課されます。
-
手続き:
- 110万円を超える贈与を行った場合、贈与税の申告が必要です。
- 贈与を受けた翌年に、税務署に贈与税申告書を提出します。
-
メリット:
- 毎年少額ずつ贈与を行えば、相続財産を減少させ、相続税負担の軽減が図れます。
- 手続きが簡単で、繰り返し利用しやすいです。
-
デメリット:
- 一度に大きな贈与を行うと、累進課税のため高い税率が適用され、税負担が増えます。
3. 教育資金の贈与税の非課税措置
-
制度概要: 子供や孫に対して教育資金を贈与する場合、最大1,500万円まで非課税で贈与できる特例です。教育資金を直接教育資金専用口座に入金する必要があります。
-
手続き:
- 贈与契約書を作成し、教育資金専用口座を開設します。
- 贈与後、使途報告書を税務署に提出します。
- 教育資金の支払いが教育目的でない場合、非課税措置は適用されません。
-
メリット:
- 教育資金を非課税で贈与できるため、子供や孫の学費負担を軽減できます。
- 贈与後の使途が明確であるため、贈与税の申告が簡便です。
-
デメリット:
- 資金が教育目的で使用されない場合、非課税措置が適用されません。
- 贈与額に限度があるため、大きな教育資金を一度に贈与する場合には注意が必要です。
4. 結婚・子育て資金の贈与税の非課税措置
-
制度概要: 結婚や子育てにかかる資金を贈与する場合、一定額まで非課税となる措置です。結婚に際しては1,000万円、子育てに対しては500万円まで非課税で贈与できます。
-
手続き:
- 贈与契約書を作成し、贈与者と受贈者が結婚・子育て資金のためであることを証明します。
- 贈与税申告書を提出し、非課税措置を適用してもらいます。
-
メリット:
- 結婚や子育てにかかる資金を非課税で贈与でき、家族の支援が可能です。
- 非課税の範囲内であれば、贈与税を気にすることなく贈与できます。
-
デメリット:
- 非課税額に上限があり、贈与額が多くなると贈与税が課せられます。
- 資金の使途が結婚や子育てに限られ、他の目的に使用する場合は税負担が発生します。
5. 住宅取得等資金の贈与税の非課税措置
-
制度概要: 住宅取得資金を子供や孫に贈与する場合、一定額まで非課税となる特例があります。最大3,000万円まで非課税で贈与できます。
-
手続き:
- 住宅取得資金専用の契約書を作成し、必要書類(住宅購入契約書や不動産登記簿)を準備します。
- 贈与税申告書を提出し、非課税措置を適用します。
-
メリット:
- 住宅購入資金を非課税で贈与でき、家族に住まいを提供できます。
- 非課税枠を利用すれば、高額な税負担を回避できます。
-
デメリット:
- 住宅購入に関連する資金だけに限定され、他の目的に使用すると非課税措置が適用されません。
- 非課税額に限度があり、贈与額が超えると贈与税が課されます。
6. 贈与税の配偶者控除
-
制度概要: 配偶者への贈与は、一定の条件を満たすことで、最大2,000万円まで非課税で贈与できます。
-
手続き:
- 配偶者控除を適用するためには、贈与税の申告が必要です。
- 配偶者控除を受けるためには、贈与者が生前である必要があります。
-
メリット:
- 配偶者に対する大規模な贈与が非課税となり、財産の移転がスムーズに行えます。
- 相続時における配偶者への負担を軽減できます。
-
デメリット:
- 条件に合致しない場合、非課税措置が適用されません。
- 贈与を受けた配偶者が他の相続人と関係する場合、調整が必要になることがあります。
7. 特定障害者等に対する贈与税の非課税制度
-
制度概要: 特定障害者に対して、生活支援や医療費などのために贈与する場合、非課税で贈与できます。
-
手続き:
- 贈与契約書を作成し、障害者手帳や必要書類を提出します。
- 贈与税申告書を提出し、非課税措置を適用します。
-
メリット:
- 障害者への支援が非課税で行えるため、生活の支援が容易になります。
- 経済的負担を軽減することができます。
-
デメリット:
- 対象者が特定障害者であることを証明する書類が必要で、手続きがやや複雑です。
8. 生命保険の活用
-
制度概要: 生命保険は相続税対策の一つとして有効です。生命保険の死亡保険金は、受取人が指定されていれば、相続財産に含まれず、非課税枠を利用できることがあります。受取人が配偶者や子供の場合、生命保険金の一定額が非課税となる「相続人の非課税枠」が適用されます。
-
手続き:
- 生命保険に加入する際、保険金の受取人を明確に指定します。
- 死亡時に保険金が支払われる際、受取人が申告を行い、非課税枠が適用されることを確認します。
- 保険金を受け取った後、その金額に対する相続税が課税されない範囲内であれば、非課税となります。
-
メリット:
- 保険金が相続財産として計上されない場合があり、相続税の軽減につながります。
- 相続時に一時的な現金支出を支援し、相続人に負担をかけずに済むことがあります。
- 配偶者や子供に対する生命保険金の一部は非課税で、相続財産の圧縮が可能です。
-
デメリット:
- 非課税枠を超える場合、相続税が課せられます。
- 保険料の支払い負担があるため、計画的な保険加入が求められます。
- 非課税の範囲が限られており、大きな保険金を受け取った場合には、相続税が高くなる可能性があります。
これらの制度を活用することで、相続税の負担を減らし、次世代への資産移転を効率的に行うことができます。制度の適用には条件があるため、税理士など専門家のアドバイスを受けながら、最適な方法で相続対策を進めましょう。